文書偽造罪で執行猶予②

文書偽造罪で執行猶予②

文書偽造罪執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回の記事では後者を取り扱うので、文書偽造罪については前回の記事をご参照ください。

【ケース】

福島県郡山市に住むAさんは、スピード違反により免許証の効力が停止され、運転しようにも免許がない状態でした。
ある日、Aさんが市内を歩いていたところ、道路に免許証が落ちているのを見かけました。
そこで、免許証の顔写真、氏名、生年月日、住所を自身のものに貼り替え、あたかも自らの免許証であるかのような物を作成しました。
Aさんはそれを携帯して運転していましたが、検問の際に偽造した運転免許証であることを見破られ、公文書偽造罪などの疑いで逮捕されました。
Aさんと接見した弁護士は、執行猶予について説明しました。
(フィクションです。)

【執行猶予とは何か】

執行猶予とは、裁判で有罪となって刑が言い渡された際に、その刑の執行を一定期間見送るという制度です。
執行猶予には、刑の全部の執行が猶予される場合と、刑の一部のみ執行が猶予される場合とがあります。
一部の執行猶予については行われるケースがやや限定的なので、今回は全部の執行猶予について取り扱います。

【刑の全部執行猶予について】

刑の全部の執行猶予は、言い渡された刑が3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の場合に、情状(事件の内容や被告人の反省の程度など)により付されるものです。
執行猶予の期間は1年から5年であり、言い渡された懲役または禁錮の期間より長い期間が設定されるのが通常です。
初犯だけでなく前科がある場合も執行猶予となる余地がありますが、その要件は当然ながら厳しくなります(詳しくは刑法25条参照)。

刑の全部の執行猶予が言い渡された場合、裁判が終わったあとで直ちに刑務所に行くなどの事態は回避できます。
それだけでなく、執行猶予期間中に執行猶予の取消し(後述)がなされなければ、刑の言い渡しは効力を失い、刑を受ける必要はなくなるのです。
この点が執行猶予の最大のメリットと言っても過言ではないでしょう。

刑の全部の執行猶予は、一定の事情が生じた場合に取り消されるおそれがあります。
取消しの原因となる事情は以下のとおりです。

①必要的取消し(必ず執行猶予が取り消される)
執行猶予期間中に罪を犯して死刑、懲役、禁錮のいずれかの刑(以下、「禁錮以上の刑」)に処せられ、その刑(死刑を除く)の全部について執行猶予がつかなかったとき
執行猶予を言い渡される前に犯した罪につき禁錮以上に処せられ、その刑(死刑を除く)の全部について執行猶予がつかなかったとき
執行猶予を言い渡される前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられた(刑の全部が執行猶予となった場合を除く)ことが発覚したとき

②裁量的取消し(場合により執行猶予が取り消される)
執行猶予期間中に罪を犯し、罰金刑に処せられたとき
・保護観察に付せられた場合において遵守事項を破り、なおかつその情状が重いとき
執行猶予を言い渡される前に他の罪について禁錮以上の刑に処され、その刑の全部が執行猶予となったことが発覚したとき

これらの要件から考えるに、執行猶予となったあとで真面目に社会生活を送っていれば、過去の犯罪が蒸し返されない限り執行猶予が取り消される可能性は低いと言えるでしょう。

以上からお分かりになるかと思いますが、執行猶予は何かと複雑なことが多く、その獲得に向けた活動も一筋縄ではいかないことがありえます。
もし執行猶予を目指すのであれば、やはり弁護士に事件を依頼して手厚いサポートを受けるのが賢明です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が、執行猶予に関するお悩みの解決に尽力します。
ご家族などが文書偽造罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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