【刑事手続の流れ】
I. 逮捕されていない場合
- 検察官送致
- 検察官による処分の決定
- 裁判
(1). 略式手続
(2). 正式裁判
というルートをたどるのが一般的です。この間、被疑者は身体拘束を受けることなく手続が進行していきます。
検察官は、最終的に被疑者を起訴するのかしないのかを決める権限を有している人で、警察は検察官の下に事件を送ります。そのうえで、検察官は、事件をどう処理するのかを警察からの記録などを見て判断します。
検察官が起訴しないと決めると、この2の時点で手続きは終了します。他方、検察官が起訴すると決めると、3の裁判手続きに移行します。このうち、略式手続というのは、現実には法廷での裁判は開かれず、被疑者が罰金を支払うことに同意して事件は終了します。これに対し、正式裁判というのは、実際に法廷で裁判が開かれ、被疑者は裁判官の前で、事件があったのかなかったのか、あったとしてどのような処分が適切なのかの判断を受けることになります。
【弁護士のできること】
この手続きの中で、弁護士がかかわるとしたらどのようなことができるでしょうか。
まず、刑事事件において被疑者が利用できる弁護士というのは、大きく分けて二つあります。国選弁護人と私選弁護人です。国選弁護人は、その名の通り、国が被疑者の権利実現のために弁護士費用を負担してくれる弁護人であり、被疑者は弁護士費用を支払う必要はありません。
しかし、国選弁護人は身柄拘束(詳しくは、Ⅱ「逮捕されている場合」を参照ください。)を受けていない場合、上記3の裁判になって初めてつくことができる制度です。ですので、次に述べるように裁判前に行う弁護人の活動を行うことはできません。被疑者にとって無料で利用することのできる国選弁護人ですが、この点が、最も大きなデメリットと言えます。
これに対し、私選弁護人ですが、これは被疑者が自分の費用で自由に選んで選任する弁護士です。ですから、費用は弁護士次第であり、国選弁護人のように無料ではありません。これに対応する「対価」として私選弁護人ができるのが、上記1、2の手続きの段階での対応です。
具体的には、
- 検察官に対して、被疑者の有事な事情を証拠化して伝えること、及び不起訴あるいはより軽い処分となるよう働きかけること、
- 警察・検察官からの取調べにおける対応のアドバイス、
- 被害者と連絡を取り合って、示談等を進めることです。
このように私選弁護人は、国選弁護人よりも早い時期に適切な弁護活動を行うことにより、被疑者の処分がより軽くなるよう動くことができる点が最大のメリットと言えます。
【刑事手続の流れ】
II. 逮捕された場合
- 逮捕
- 検察官送致
- 勾留
- 検察官による処分の決定
- 裁判
(1). 略式手続
(2). 正式裁判
というルートをたどるのが一般的です。基本的に逮捕されていない場合と流れは似ていますが、大きく違うのは、被疑者が身体拘束を受けているという点です。
逮捕・勾留は、被疑者の身体を拘束して、留置場や拘置所に被疑者をとどめ置き、その間に犯罪の捜査を進めていこうというものです。ですから、逮捕、勾留がなされるとその間被疑者は外に出ることはできません。また、面会も一般の方の場合、制限されることがあります(接見禁止が取られた場合)。
身体拘束の期間ですが、逮捕の場合3日、勾留の場合(起訴される前について)最長で20日なので、合わせて、最長23日間身体拘束を受けることになります。さらにその上で、裁判になれば、勾留(起訴後について)がされる場合があり、この場合、裁判が終わるまでは外に出ることができなくなります。
【弁護士のできること】
では、逮捕されている場合に弁護士ができることとしてはどのようなことがあるでしょうか。基本的な活動は前述した逮捕されていない場合と同じです。
ただ、被疑者が身体拘束を受けていることとの関係で、被疑者の身柄解放活動、外に出るための活動が追加されます。
具体的には、①被疑者が勾留されないよう、検察官・裁判官に対して働きかけること、②仮に起訴されてしまった場合、勾留による身体拘束が継続しないよう保釈の手続きをとることを通じて、なるべく早期に被疑者が身体拘束から解放されるように活動していきます。
「身体拘束から解放されること」=「事件が終わること」を意味しているわけではありませんが、身柄解放によって仕事など社会生活を取り戻すことができます。
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