福島県喜多方市でネット売買で詐欺
福島県喜多方市在住の大学生Aさん(22歳)は、お小遣い稼ぎのため、新発売の人気ゲーム機が日本国内で品切れ状態が続いて入手困難であることに着目し、実際には製品を所有していないにも関わらず、「独自のルートにより商品を入荷しました。」と虚偽の説明をして、購入希望者にネットオークションを行わせ、落札に成功したVさんからお金を振り込ませました。
Vさんの「Zの発送はいつ頃になりますか?」との質問に対し、「海外からの平行輸入品のため発送にお時間がかかります」と虚偽の説明をしてはぐらかしていましたが、いつまでも商品が発送されてこないVさんが福島県警喜多方警察署に詐欺被害を訴え、警察はAさんを詐欺罪の疑いで任意出頭を求めました。
警察の調べに対し、Aさんは「商品を仕入れる予定はあり詐欺の意図はない」と被疑事実(詐欺の故意)を否認しています。
(フィクションです。)
経済産業省の市場調査によれば、日本国内の消費者向けネット売買(EC)市場は16兆5054億円に達し、取引全体の約5.8%に及んでおり、今後も拡大を続ける模様です。
このような中、メーカーや小売店でない、極めて小規模な零細企業や、あるいは全くの個人がネット売買に参入することの難易度も低下しており、昨今では、個人が海外製品を個人輸入して、それに利益を乗せた額で販売(転売)する行為も頻繁に見られるようになりました。
刑法第246条によれば、人を欺いて財物を交付させた場合、10年以下の懲役が科されます(詐欺罪)。
詐欺罪に関する判例によれば、代金を支払える見込みもその意思もなく商品買受けの注文をしたときには、その注文行為自体が作為による欺罔行為(人を欺く行為)にあたるとされています。
これは、売り手と買い手を逆にすれば、商品を提供できる見込みもその意思もなく商品を提供する旨を表明した場合は、その行為自体が「人を欺いて」に当たると言えそうです。
この点、上記刑事事件例で被疑者が被疑事実を否認した理由として挙げたように、「確かに契約締結時点では商品を提供することはできなかったが、商品を入荷次第、すぐに商品を提供するつもりだった。」として、商品提供の意思そのものはあったものの、その商品を提供するプロセスに遅延や不測の出来事があったため、提供したくてもできなかったと主張することが多々あります。
しかし、欺罔の意思の有無は、被疑者の主観的な内面によって決定されるのではなく、通常そのビジネスに関わる者であればそのような商品の提供をすることが難しいという客観的、社会通念的な観点から判断されるため、捜査機関は、過去に同じ商品を仕入れていたのか否か、そして仕入れていたのであれば、通常どの程度の納期が必要であるのか、今回仕入れが遅れたことについて特段の事情が認められるのか等について厳しい事実究明を行うことが予想されます。
このような詐欺罪の否認の刑事事件では、初期の捜査段階で、素人考えで不適切な供述を捜査機関にしてしまうと、その供述が調書に記録され、後の刑事手続で被疑者・被告人にとって不利になってしまうことが予想されますので、刑事事件の初期の段階から、刑事事件の経験豊富な弁護士に速やかに事件を依頼し、事件の見通しを知ったうえで適切な捜査対応を行うことが重要となります。
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