医療ミスで業務上過失傷害罪に

Aさんは、福島県東白川郡にあるX病院にて麻酔科医を務めています。
ある日、X病院で全身麻酔を用いて患者のVさんの手術をすることになり、Aさんはその麻酔を担当することになりました。
手術当日、Vさんに麻酔を導入したAさんは、別の業務があったことから手術室を後にしました。
それから30分程度して手術室に戻ったところ、麻酔用の医療機器に不具合が見つかり、Vさんに手足のしびれなどの後遺症が残りました。
この件で、Aさんは業務上過失傷害罪の疑いで棚倉警察署にて取調べを受けることになりました。
Aさんは、他に医師や看護師がいたことから自身の一連の行動に誤りはないと考えており、弁護士に事件を依頼して不起訴や無罪を目指すことにしました。
(フィクションです)

【医療ミスの際に問題となる罪】

医療ミスによって、医師が患者に本来予定されていなかった症状を生じさせた場合、業務上過失致死傷罪が成立する可能性があります。

刑法第211条(一部抜粋)
 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。

業務上過失致死傷罪は、過失(簡単に言えば不注意)による死傷を罰する過失傷害罪および過失致死罪の加重類型です。
犯罪というのは原則として故意によるものを処罰するとされており、過失によるものの処罰というのは例外的です。
そのことから、過失傷害罪および過失致死罪については重い刑事責任を負わせるべきでないと考えられており、法定刑も故意の傷害罪や殺人罪に比べて著しく軽いものとなっています。
ですが、他人の身体・生命を脅かす仕事などを行っている者まで軽く処罰するとなると、社会において危険な活動が安易に行われてしまうおそれがあります。
そこで、業務上過失傷害罪という類型を創設し、通常の過失傷害罪より重く処罰するものとしているのです。

【不起訴や無罪を目指す】

医療ミスにより業務上過失致死傷罪を疑われた場合、最も問題となるのは過失の有無ではないかと思います。
先述のとおり、「過失」とは簡単に言えば不注意のことですが、刑事事件においてその認定は厳格に行われます。
具体的には、結果が想定できたか、結果阻止のためにどのような対応ができたか、その対応は期待できたか(難しくなかったか)、といった点が細かく検討されることになります。

仮に「過失」がなかったと判断されると、業務上過失致死傷罪の要件を満たさないことになり、裁判で無罪となります。
それだけでなく、検察官が不起訴処分を下し、有罪無罪の前にそもそも裁判が行われず終了するということもあります。
これは、検察官がある事件を起訴するかどうか決める際、裁判において有罪をほぼ確実に立証できるかを考慮するためです。
日本において有罪の立証率が高い原因の一つはこの点にあり、もし検察官が「過失と言えるか怪しい」と判断すれば、不起訴となる可能性は高まります。

以上の点を踏まえ、医療ミス事件における弁護士の役割の一つは、過失の有無を争って事件を不起訴または無罪に導くことだと言えます。
ただ、弁護士一般にとって医学というのは本来畑違いですから、弁護活動に際しては弁護士の力量が試される傾向にあります。
それに加えて、過失というのは法律論だけでなく事実の認定という面でも何かと難しい問題があります。
ですので、もし医療ミス事件の弁護活動を依頼するのであれば、刑事事件に関して相応の腕前を持つ弁護士を探すのが得策でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に特化した弁護士が、豊富な知識と経験を駆使して不起訴や無罪を目指します。
ご家族などが医療ミスを起こして逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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