自動運転システム故障で過失運転致死傷罪?

自動運転システム故障で過失運転致死傷罪?

運転支援システムの故障により事故が起きた場合、過失運転致死傷罪は成立するのでしょうか。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】
Aさんは福島県二本松市内の高速道路を走行中、前の車に追突してしまい、1人を死亡させ、もう1人にケガをさせてしまいました。
Aさんの運転していた車には、車間距離等を計測して一定の間隔を保ちながら走行できる運転支援システム(クルーズコントロール)が搭載されていました。
しかし事故当時このシステムが故障しており、Aさんも寝ぼけながら運転していたため本件の事故が起こってしまいました。
Aさんはどのような罪に問われるのでしょうか。
(このケースはフィクションです。)

~過失運転致死傷罪が成立するか~

近年、AI技術の向上に伴い自動車運転の自動化が急速に進んでいます。
各メーカーの見立てによれば、2025年頃には完全な自動運転機能を搭載した自動車の一般での実用化の可能性も高いとのことです。

このような自動化は、運転能力の不十分な者、たとえば免許返納を考えるような高齢者や、四肢に障がいのある方などにも自動車による移動を可能にするものであり、ますますの発展が望まれるところです。

しかし同時に、運転の自動化は法律的に難しい問題をいくつも抱えています。
本件のような、運転補助システムが正常に働かず結果として事故が起きてしまった場合に、事故の刑事責任を運転者に問うべきかが議論の的となっています。

通常、居眠りなどで交通事故を起こして相手に死亡や負傷させた場合、過失運転致死傷罪が成立します
「過失」とは簡単に言えば不注意です。
不注意で事故を起こし、他人を死傷させると、最大で7年の懲役が科される可能性があります(自動車運転処罰法5条)。
(*スピード違反や飲酒等危険な運転による場合はさらに重い罪が科されます)

では、本件でAさんは過失運転致死傷罪は成立するのでしょうか。

本事例では、Aさんの車のクルーズコントロールシステムが正常に作動しませんでした。
しかし、正常に作動することを前提に運転していたのですから、寝ぼけながら運転していたとしても、刑事責任を負わなくてもいいのではないかとも思えます。

しかし、最近似たような事例において、事故直前の被告は前方注視が困難なほど強い眠気に襲われており、そのような場合には運転を中止する義務があったとした裁判例が存在します(横浜地裁令和2年3月31日判決)。
同判決は「中止義務に違反した被告の過失は相当に重い」とすら述べています。

とすれば本ケースでも、Aさんに過失運転致死傷罪が成立する可能性があるということです。

なお、この判決は、被告の車が停止等しなかったことは「システムの故障か機能の限界かは判然としない」という事実認定を前提にしています。
つまり、システムの故障が原因であっても、そもそもの性能の限界が原因であっても、上手くシステムが作動せずに事故が起きた場合には、運転者が責任を問われる可能性があるということになります。
システムを過信せずに運転する必要があるということになります。

ただしこの判決は、あくまでもこの事故の事情を前提とした判断です。
つまり、当時の道路や車の走行状況、掲載されていたシステムの性能、運転者の不注意の程度、その他すべての事故当時の具体的状況を前提に、過失ありという判断がなされているということです。
当然、居眠りなどしていなければ責任を問われない可能性もあります。

また今後、自動運転システムの性能自体も向上を続け、いずれは運転席に人がいないような自動運転車も実現されるでしょう。
完全自動運転の自動車では、搭乗者に刑事責任は問えない、という結論になる可能性も否定できません。

~弁護士にご相談ください~

私たちの事務所には、交通事故を含む刑事事件を専門にする弁護士のみが在籍しています。
運転サポートシステムの関わる事故はもちろんですが、それだけでなく、刑事事件に関してお困りのことがあれば、初回は無料で相談に乗っていますので、ぜひご連絡ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所でした。

 

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