往来危険罪と捜査の流れ

往来危険罪と捜査の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【ケース】

Aさんは、就職活動でV株式会社の選考に落とされたことの恨みから、Xの電車の運行を妨害しようと福島県いわき市内の線路上に石を置きました。
これにより、線路上を走行している電車は緊急停止し、その後数時間にわたって運行ダイヤが乱れるなどの影響が出ました。
いわき東警察署はすぐに捜査を開始し、Aさんを往来危険罪および威力業務妨害罪の疑いで逮捕しました。
Aさんと接見した弁護士は、Aさんに対して予想される捜査の流れを伝えました。
(フィクションです。)

【往来危険罪について】

刑法
第百二十五条
鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

往来危険罪は、電車・汽車・軍艦・船舶の往来の危険を生じさせた場合に成立する可能性のある罪です。
往来危険罪における「往来の危険」とは、電車などの転覆や脱線といった、交通の安全を害するおそれのある状態を指します。
必ずしも実害が出る必要はなく、交通の安全を害する可能性が認められれば「往来の危険」の存在は肯定されます。
上記事例では、電車が走行する線路上にAさんが置き石をしています。
このような行為は、正に電車の脱線などにより交通の安全を害する危険性があると言えます。
そうすると、Aさんには往来妨害罪が成立し、2年以上の有期懲役(上限20年)が科されるおそれがあります。

更に、線路への置き石は、石を置くことで電車の運行という業務を妨害する危険を有するものです。
そのため、威力業務妨害罪に当たるとして3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される余地もあります。
ちなみに、「業務を妨害した」とありますが、実際にダイヤ乱れなどの結果が生じなくともその危険さえあれば業務妨害罪は成立すると考えられています。

【捜査の流れ】

往来危険罪に当たりうる事件は、列車の脱線などの大事故を招くおそれがある大変危険なものです。
そのため、重大な事件として逮捕の可能性は高いことが予想されます。

刑事事件の流れは、逮捕・勾留による身体拘束が行われるか否かで大きく異なってきます。
以下では、往来危険罪の疑いで逮捕されたケースを想定し、想定される大まかな捜査の流れを見ていきます。

まず、逮捕後に警察官から①犯罪事実の要旨と②弁護人(基本的には弁護士)を選任できる旨が告げられたうえで、事件に関する弁解が聴取されます。
そして、引き続き身体の拘束が必要だと判断された場合、逮捕後48時間以内に身柄が検察庁に送致されます。
この時間内に取調べが行われることも多くあります。

身柄が検察官により引き受けられた後は、警察官から行われたのと同様に、再び事件に関する弁解が聴取されます。
その後、検察官は被疑者を更に長期間拘束すべきか判断し、必要性を感じれば被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に勾留請求をします。

検察官が勾留請求を行うと、裁判官がその当否を吟味し、身体拘束の継続が必要だと判断されれば勾留が行われます。
勾留は検察官による勾留請求の日から10日間行われるのが原則ですが、捜査の進捗次第では更に10日以内の範囲で延長されます。
加えて、勾留中に起訴が行われれば、被疑者は被告人となって勾留が最低2か月(その後必要に応じて1か月毎に更新)になります。

以上のように、捜査機関は身柄拘束に関して時間制限があることから、被疑者にとっては手続が淡々と進む印象を受けます。
漫然と時を過ごしていれば身体拘束が長期化してしまうので、釈放を目指すのであれば弁護士に依頼するなどして積極的に動く必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が、捜査の流れを把握したうえで最適な弁護活動を行います。
ご家族などが往来危険罪などの疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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