1 売春買春に対する規制
売春買春は、金銭などの対価と引き換えに性交を行うことを言います。
対価を支払う側は男女を問いません。例えば、男性が対価を受けて性行為を行う場合には、男性側が売春、女性側が買春をしたことになります。
売春行為については刑法に規定はなく、売春防止法によって禁止されています。もっとも、売春買春それ自体は直接の処罰規定はなく、売春した側が直ちに処罰されることはありません。売春防止法によって刑罰の対象となっているのは、
- 売春の勧誘をした者や
- 周旋したり、だましたりして人に売春をさせた者、
- 建物や資金を提供して売春をするための場所を提供した者
などです。
買春行為について直接罰則を科しているのは児童買春処罰法になります。
いわゆる援助交際などは児童買春処罰法違反となります。児童買春は対価と引き換えに、18歳未満の者と性交、性交と類似した行為をすることや、児童の性器などに触る行為をいい、5年以下の罰金または300万円以下の罰金が科される重い罪になります。買春の周旋(仲立ちや相手の紹介をすること)や勧誘を行った者についても5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が定められています。
日本人が海外で買春や買春の周旋などを行った場合にも日本の法律が適用されることになります。
また、出会い系サイトなど、インターネット上で異性を紹介するサイトで児童との援助交際を申し込もうとする投稿などもインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制などに関する法律(「出会い系サイト規制法」)によって規制の対象になっており、実際に援助交際をしたり児童と会ったりしていなくても100万円以下の罰金が科されます。この出会い系サイト規制法による処罰は、買春する側だけではなく、売春させようとする側も規制の対象とされています。
対価を伴う児童買春ではなくても、18歳未満の者と知りつつ性交した場合には児童淫行として、各都道府県の青少年健全育成条例違反になる場合があります。
更に児童が16歳未満であった場合には、同意の有無を問わず、原則として不同意性交罪(旧:強制性交等罪)にあたることになるので、児童買春ではなく、不同意性交罪が成立することになります。
ただし、年齢が16歳未満であったことを知っていたことが前提となりますので、16歳未満と知っていたかどうかはポイントとなります。
2 援助交際・児童買春で検挙された場合の弁護
援助交際や児童買春行為については検挙されるいくつかのパターンが考えられます。
買春の相手となった児童が両親や学校に相談したことで事件に発展するパターンや、警察のサイバーパトロールによって出会い系サイトの投稿等から事件が発覚するパターン、風俗店の摘発の際に顧客情報の記載された帳簿などが押収されて時間が経ってから買春が発覚するパターンなどがあります。
児童買春の場合、懲役刑の上限は5年、罰金刑は300万円と比較的重い犯罪ですので、逮捕、勾留されてしまう場合があります。
弁護活動としては、買春相手になった児童と示談することが考えられます。相手が18歳未満ですので、示談の相手は児童の両親になりますが、両親の被害感情が激しい場合も多く、当事者間での示談は対立が余計に深まってしまう場合があります。示談交渉の場では弁護士法人に間に入ってもらうことで感情的な対立を避けて、妥当な条件で示談をまとめることができます。
児童買春で起訴されてしまった場合にはきちんと反省しなければなりません。「相手が18歳だとは知らなかった」「向こうから誘ってきた」等の言い分があるかもしれませんが、言い分を主張するかどうかは弁護士とよく相談して決めなければなりません。
18歳未満であると認識できた状況や18歳未満と疑うべき状況にあれば児童買春罪が成立する場合もありますし、言い分が言い訳と捉えられてしまい反省していないと判断され有罪となった場合の罪が重くなってしまう場合があります。
前科などがなく、初犯の場合には略式起訴手続きがなされることが多くあります。略式手続に付された場合直ちに身柄が解放され、罰金刑の言い渡しを受けて事件が終了することになります。正式裁判として起訴された場合には判決まで1~2か月間身体拘束が続くこともあるため、略式起訴を得られれば比較的短期で社会復帰を図ることができます。
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