落書き・ビラ貼りによる建造物損壊罪で逮捕

落書き・ビラ貼りによる建造物損壊罪で逮捕

公衆トイレに落書きやビラ貼りをして、建造物損壊罪の容疑逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】
福島県福島市に住むAさんは,日ごろのいらだちから,同市内の公園の公衆トイレに,スプレー缶で「税金泥棒」「福島市長は辞任しろ」等と落書きし,また,役所に反感を示すような内容のビラを30枚ほど貼り付けました。
監視カメラの映像からAさんの犯行と特定され,Aさんは福島県福島警察署の警察官により,建造物損壊罪の疑いで逮捕されました。
(フィクションです)

~建造物損壊罪とは~

公衆トイレに落書きやビラ貼りをしたAさん。
建造物損壊罪という犯罪が成立する可能性があります。

刑法260条
「他人の建造物……を損壊した者は,5年以下の懲役に処する」

あまり聞きなじみのない犯罪かもしれませんが、簡単に言えば,他人所有の建物を壊した場合に成立する罪です。

一般にもよく知られる器物損壊罪は,「前三条に規定するもののほか,他人の物を損壊し……者は,三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する」(261条)となっています。
建造物損壊罪の方が懲役の上限が長く、罰金で済む可能性もないため、より重い犯罪ということになります。
損壊の対象が物よりも一般的には価値が高い建造物であることや、中にいる人に危険が及ぶ可能性があるといった理由により,器物損壊罪よりも重い刑罰が定められています。

~壊してないけど~

今回、Aさんは公衆トイレを物理的に壊したわけではありませんが,それでも建造物損壊罪は成立するのでしょうか。

ここでは、条文に出てきた「損壊」という言葉の意味が問題となります。
建造物損壊罪における「損壊」には、建造物を物理的に破壊した場合の他に,建物の効用を害する一切の行為が含まれると解釈されています。
つまり、物理的に壊れていなくても、建造物としての利用が困難になれば、建造物としての効用が害されているわけなので「損壊」に当たり、建造物損壊罪が成立することになるわけです。

今回のような公衆トイレの場合には、落書きやビラ貼りがなされても、トイレとして利用することができるので、効用を害していないといえる気もします。
しかし,公衆トイレに大きな落書きがなされた事件で最高裁判所は,落書きが「損壊」にあたると判断しています(最決平成18年1月17日刑集60巻1号29項)。

この判例は,わかりやすく言うと,

・外観・美観に工夫が凝らされ誰でも利用しやすい状態だった公衆トイレが,大きな落書きによって汚い・治安が悪そうといった印象を与えるなど,利用することに抵抗感ないし不快感を与えるような状態となっている
・しかもすぐに消せる落書きではなく,原状回復にはある程度費用がかかるなど相当な困難が伴う落書きだった

といった事情により、きれいで誰でも利用しやすい公衆トイレとしての効用を害しているので,「損壊」に当たると判断したものといえるでしょう。

この判例は,トイレへの落書きが常に「損壊」に当たると言っているわけではありません。
しかしこの判例によれば,今回のAさんの事例においても,公衆トイレが元々どのような外観であったか、落書きやビラの大きさ・ビラの枚数・その内容がどうだったか,簡単に消したり剥がしたりできるかといった事情によっては,自由に使える公衆トイレとしての効用を害しているとして建造物損壊罪が成立する可能性があるということになります。

~弁護士にご相談ください~

このように法律の世界では,一般的な使われ方とは微妙に異なる意味で言葉が使われたり,その言葉に該当するかどうかの判断のために多くの事情を考慮しなければならないなど、難しい面があります。
それゆえ,一般の方が犯罪にならないと思っていたことが犯罪だった,ということもあります。

そしてご自身やご家族が何らかの犯罪で逮捕されたり取調べを受けた場合には,刑事手続がどのように進んでいくのか,いつ釈放されるのか,どれくらいの刑罰を受けるのか,示談はどうやって行えばよいのかなど,不安だらけだと思います。

事件解決に向けてサポートしてまいりますので,まずは一度ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない場合やすでに釈放されている場合には、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

 

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