取調べの可視化

取調べの可視化とは、取調べの様子を録音・録画することを指します。

被疑者となり、犯罪者であるとの疑いをかけられた場合、警察や検察官から取調べを受けることとなります。この取調べは、取調室の中で行われるのが一般的ですが、その中には弁護士でさえ入ることができないのが一般的です。従来は、取調官と被疑者が、どのようなやり取りを行い、どのように調書が作成されたのかは弁護士でさえ、全く分かりませんでした。

後日裁判になって、自白の任意性に疑いがある、つまり無理やり自白させられたと被告人が主張するときにも、警察官などはそのようなことはなかったの一点張りで、結局何があったのかわからないという形になることもありました。

このような争いを避けるために、取調べの様子を録画することが求められるようになりました。

現在は、実務上の運用として録音・録画が行われています。これを法律上の義務として定めた刑事訴訟法改正法が平成28年に成立しました。

改正刑事訴訟法により取調べが録画されるようになった事件は、大きく分けると以下の2種類です。

  裁判員裁判対象事件

  検察庁独自捜査事件

に含まれるのは、殺人や放火、危険運転致死などの重い犯罪です。自白が任意であるかどうか特に問題になる事件であるため対象とされました。

は特殊な事件です。通常、警察が捜査し、検察庁に事件を送るという流れをたどります。しかし、贈収賄や汚職など、一定の政治的な事件については検察官が独自に捜査をするということがあります。この系統の事件も重大事件であり、自白の任意性が争われるため、問題となります。

ところで、可視化は対象事件であれば必ずされるわけではありません。例外として、i.機材がない場合 ii.本人が拒んだ場合 iii.本人が暴力団員である場合には、録音録画されません。

弁護側の対応としては、本人に拒んでもらってあえて録音録画をしないか、それとも録音録画をそのまましてしまうか、選択することとなります。

録音録画していると、取調官が暴力を加えたり、だますような言動をした場合にそれが明白に記録されます。反対から言うと、録音録画されていることが抑止力にもなります。

しかし、反面、意図せず不利な供述をしてしまった場合、もはや任意性が争えるような状況にありませんから、そのまま裁判で証拠として用いられてしまいます。

どのような場合に録音録画を拒むかは、ケースバイケースです。一度録画されてしまうと取り返しがつきませんから、なるべく早い段階で弁護士にご相談ください。

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