11月, 2019年
器物損壊罪と不起訴
器物損壊罪と不起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【ケース】
Aさんは、福島県福島市に住む知人のVさんがなかなか借金を返済してくれないことに腹を立て、Vさん宅の窓に向かって硬式野球のボールを投げました。
ボールは窓に直撃してガラスの破片が飛び散りましたが、日中でVさんが留守にしていたため怪我人はいませんでした。
その後、Vさん宅に仕掛けられていた防犯カメラの映像が決め手となり、Aさんは器物損壊罪の疑いで福島警察署にて取調べを受けることになりました。
もともと野球中の事故を装おうと考えていたAさんは、焦って弁護士に不起訴にできないか相談しました。
(フィクションです。)
【器物損壊罪について】
刑法
第二百六十一条
…他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(一部省略)
器物損壊罪は、他人の物(建造物、艦船、特定の内容の文書を除く)を「損壊」した場合に成立する可能性のある罪です。
器物損壊罪における「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為を指すとされています。
上記事例では、AさんがVさん宅に向かって野球用の硬球を投げ、窓ガラスを割っています。
このような行為は正に「損壊」と言えるため、Aさんは器物損壊罪として①3年以下の懲役、②30万円以下の罰金、③科料(1,000円以上1万円未満の金銭の納付)のいずれかが科されるおそれがあります。
ちなみに、窓ガラスのような建造物に付随する物が損壊されたケースでは、その物を建造物の一部と見て、器物損壊罪ではなく建造物損壊罪(刑法260条)が成立する余地があります。
裁判例には、工具を使うことで損壊することなく取り外しができた玄関ドアについて、外部との遮断、防犯、防風、防音などの機能上の重要性を重視して建造物損壊罪の成立を認めたものがあります。
【不起訴を目指すには】
刑事事件は、その全てが裁判になって最終的に刑罰が科されるというわけではありません。
中には、不起訴となって刑罰を科されることなく終了する事件が少なからずあります。
そのため、たとえ刑事事件を起こしてしまっても、一度冷静になって不起訴の可能性がないか弁護士に聞いてみることを心掛けるとよいでしょう。
不起訴の理由は多岐に渡りますが、その中でよく見られるものとして起訴猶予が挙げられます。
起訴猶予とは、検察官にとって起訴すれば有罪にできる見込みがあるものの、様々な事情を考慮して起訴を敢えて見送る処分です。
考慮される事情としては、①性格や来歴といった犯人に関する事情、②動機や軽重といった犯罪に関する事情、③犯罪後の情況が挙げられます
検察官により不起訴処分が下された場合、その事件は不起訴として終了したものとみなされ、よほどのことがない限り起訴されて裁判が行われることはなくなります。
起訴されなければ裁判で事件が公になることはありませんし、懲役や罰金などの刑罰も科されませんので、被疑者にとっては非常に有益と言えるでしょう。
器物損壊事件において起訴猶予による不起訴を目指すなら、やはり被害者との示談が重要になります。
示談により被害弁償や謝罪などの事実をアピールできれば、検察官としても積極的に処罰する必要はないとして不起訴にする可能性が高まるからです。
ただ、事件の張本人が直接示談交渉に及ぶことは、交渉の決裂や被害者からの不当な要求のリスクがあることから決しておすすめできません。
適正な内容の示談をできるだけ早く交わすなら、ぜひ法律の専門家である弁護士に示談交渉を依頼してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に特化した弁護士が不起訴の実現に向けて充実した弁護活動を行います。
器物損壊罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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建造物侵入罪と逮捕
建造物侵入罪と逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【ケース】
Aさんは、キャッシュカードを偽造して他人の預金を引き出そうと考え、ATMにスキミング用の装置を取り付けることにしました。
そこで、福島県いわき市内の郵便局に立ち入り、計画どおりATMのキャッシュカード挿入口にスキミング用の装置を取り付けました。
その翌日、郵便局の従業員がATMに不審な装置が取り付けられていることに気づき、いわき中央警察署に相談することにしました。
しばらくして、ATM付近に設置されていた防犯カメラの映像が決め手となり、Aさんは建造物侵入罪の疑いで逮捕されました。
逮捕の知らせを受けたAさんの両親は、弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです。)
【建造物侵入罪について】
刑法
第百三十条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
建造物侵入罪は、正当な理由なく建造物に立ち入った場合に成立する可能性のある罪です。
住居侵入罪や不退去罪とともに、刑法130条に規定されています。
建造物侵入罪における「正当な理由」とは、建造物への立入りを適法と見ることができる事情を指します。
その例としては、建造物の管理者の同意がある、暴漢に襲われてやむを得ず逃げ込んだ、といったものが考えられます。
建造物侵入罪は管理者の同意がなければ成立しないため、誰でも自由に立入りが認められている建造物への立入りには適用されないようにも思えます。
しかし、そうした出入りが自由な建造物は管理者の同意が推定されていると言え、その推定が破られれば建造物侵入罪に当たる余地が出てきます。
上記事例において、Aさんはスキミング用の装置をATMに取り付ける目的で郵便局に立ち入っています。
こうした目的は、郵便局の管理者である職員の同意が推定されない不法はものと考えられます。
そうすると、Aさんには建造物侵入罪が成立し、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
ちなみに、スキミング装置の取付けについては、支払用カード電磁的記録不正作出等準備罪に当たる可能性があります。
【逮捕の種類とその概要】
刑事事件では、事件の重大性や被疑者の態度などを考慮して逮捕が行われることがあります。
この逮捕には、①通常逮捕、②現行犯逮捕、③緊急逮捕の3種類があります。
以下では、それぞれの逮捕の概要を説明していきます。
①通常逮捕
通常逮捕は、過去に起きた事件について、裁判官に逮捕状を請求して行う基本的な逮捕です。
たとえば、捜査機関が自宅を訪ねて逮捕する場合や、警察署で取調べをした際に逮捕する場合などが考えられます。
事前に裁判官に逮捕状を請求する必要があるとされているため、安易な通常逮捕は抑制されていると言えます。
②現行犯逮捕
現行犯逮捕は、犯罪を行っている最中またはその直後である者に対し、逮捕状を取得することなく行う逮捕です。
現行犯は誤認逮捕の可能性が低い一方、直ちに被疑者の身柄を確保する必要があるため、例外的に逮捕状なくして行うことができるものとされています。
また、捜査機関だけでなく私人でも行える点も特徴の一つです。
③緊急逮捕
緊急逮捕は、一定の重大な罪を犯した疑いが充分である者に対し、事後的に逮捕状を取得することを条件に行う逮捕です。
事前に逮捕状を取得する必要がない点で捜査機関に大きな権限があるため、対象となる罪の限定と充分な嫌疑の要求という厳しい要件となっています。
もし緊急逮捕を行った後で逮捕状の請求が却下された場合、被疑者は直ちに釈放されなければなりません。
以上のように、逮捕にはそれぞれ別個の定めがなされており、それを捜査機関が遵守したかどうかは弁護士にとって重要な事情となります。
場合によっては証拠排除による無罪や国に対する損害賠償請求に関わってくるので、違法な逮捕があったと感じたら一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に特化した弁護士が、依頼者様の利益を最大化させるべく手を尽くします。
ご家族などが建造物侵入罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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往来危険罪と捜査の流れ
往来危険罪と捜査の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【ケース】
Aさんは、就職活動でV株式会社の選考に落とされたことの恨みから、Xの電車の運行を妨害しようと福島県いわき市内の線路上に石を置きました。
これにより、線路上を走行している電車は緊急停止し、その後数時間にわたって運行ダイヤが乱れるなどの影響が出ました。
いわき東警察署はすぐに捜査を開始し、Aさんを往来危険罪および威力業務妨害罪の疑いで逮捕しました。
Aさんと接見した弁護士は、Aさんに対して予想される捜査の流れを伝えました。
(フィクションです。)
【往来危険罪について】
刑法
第百二十五条
鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
往来危険罪は、電車・汽車・軍艦・船舶の往来の危険を生じさせた場合に成立する可能性のある罪です。
往来危険罪における「往来の危険」とは、電車などの転覆や脱線といった、交通の安全を害するおそれのある状態を指します。
必ずしも実害が出る必要はなく、交通の安全を害する可能性が認められれば「往来の危険」の存在は肯定されます。
上記事例では、電車が走行する線路上にAさんが置き石をしています。
このような行為は、正に電車の脱線などにより交通の安全を害する危険性があると言えます。
そうすると、Aさんには往来妨害罪が成立し、2年以上の有期懲役(上限20年)が科されるおそれがあります。
更に、線路への置き石は、石を置くことで電車の運行という業務を妨害する危険を有するものです。
そのため、威力業務妨害罪に当たるとして3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される余地もあります。
ちなみに、「業務を妨害した」とありますが、実際にダイヤ乱れなどの結果が生じなくともその危険さえあれば業務妨害罪は成立すると考えられています。
【捜査の流れ】
往来危険罪に当たりうる事件は、列車の脱線などの大事故を招くおそれがある大変危険なものです。
そのため、重大な事件として逮捕の可能性は高いことが予想されます。
刑事事件の流れは、逮捕・勾留による身体拘束が行われるか否かで大きく異なってきます。
以下では、往来危険罪の疑いで逮捕されたケースを想定し、想定される大まかな捜査の流れを見ていきます。
まず、逮捕後に警察官から①犯罪事実の要旨と②弁護人(基本的には弁護士)を選任できる旨が告げられたうえで、事件に関する弁解が聴取されます。
そして、引き続き身体の拘束が必要だと判断された場合、逮捕後48時間以内に身柄が検察庁に送致されます。
この時間内に取調べが行われることも多くあります。
身柄が検察官により引き受けられた後は、警察官から行われたのと同様に、再び事件に関する弁解が聴取されます。
その後、検察官は被疑者を更に長期間拘束すべきか判断し、必要性を感じれば被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に勾留請求をします。
検察官が勾留請求を行うと、裁判官がその当否を吟味し、身体拘束の継続が必要だと判断されれば勾留が行われます。
勾留は検察官による勾留請求の日から10日間行われるのが原則ですが、捜査の進捗次第では更に10日以内の範囲で延長されます。
加えて、勾留中に起訴が行われれば、被疑者は被告人となって勾留が最低2か月(その後必要に応じて1か月毎に更新)になります。
以上のように、捜査機関は身柄拘束に関して時間制限があることから、被疑者にとっては手続が淡々と進む印象を受けます。
漫然と時を過ごしていれば身体拘束が長期化してしまうので、釈放を目指すのであれば弁護士に依頼するなどして積極的に動く必要があるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が、捜査の流れを把握したうえで最適な弁護活動を行います。
ご家族などが往来危険罪などの疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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暴行罪と不起訴
暴行罪と不起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【ケース】
Aさんは、福島県いわき市を走行する電車に乗っていた際、乗客のVさんとトラブルになりました。
2人は近くの駅で降車して言い合いになり、AさんがVさんの胸倉を掴んで近くの柱に押し付けました。
その姿を駅員が目撃して警察に通報し、Aさんはいわき南警察署にて暴行罪の疑いで取調べを受けることになりました。
後日、Aさんは弁護士の元を訪れて、なんとか不起訴で穏便に済ませられないか相談することにしました。
(フィクションです。)
【暴行罪について】
刑法
第二百八条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
暴行罪は、他人に対して暴行を加えたものの、怪我などの傷害には至らなかった場合に成立する可能性のある罪です。
暴行罪と聞くと、第一に殴る蹴るといった典型的な暴行を想像される方が多いかと思います。
ですが、ここで言う「暴行」とは、不法な有形力を行使する一切の行為と考えられています。
つまり、暴力のみにとどまらず、相手方に向けられた不法な行為であれば広く暴行罪に当たる余地があるということです。
最近いわゆる「あおり運転」が問題となっていますが、これについても警視庁が暴行罪の適用を促すような通達を行っています。
「罪に当たらないと思っていた行為が実は暴行罪だった」というケースは、よくよく探してみると意外に多いかもしれません。
上記事例では、AさんがVさんの胸倉を掴んで柱に押し付けています。
このような行為は正に「暴行」と言え、Aさんは暴行罪として①2年以下の懲役、②30万円以下の罰金、③拘留、④科料のいずれかが科されるおそれがあります。
ちなみに、上記暴行によりAさんが外傷を負ったり失神したりした場合、傷害罪などのより重い罪が成立する可能性が出てきます。
【不起訴について】
刑事事件には裁判のイメージがつきまといがちですが、実際のところ裁判に至る事件というのは全体の1割もありません。
略式起訴を合わせても起訴率は全体の3割強にとどまっており、それと家庭裁判所送致を除く全体の6割強が不起訴で終了しているという実情があります(以上、法務省公表の平成29年実績)。
検察官により不起訴処分が下された場合、その日を以って事件は終了し、よほどのことがない限り起訴などにより事件が蒸し返されることはありません。
ですので、もし不起訴の知らせを受けたら、もはやその事件に関して捜査や刑罰がなされることはないと考えてよいでしょう。
不起訴には様々な理由がありますが、代表的なものとして①起訴猶予、②嫌疑不十分、③嫌疑なしの3つが挙げられます。
まず、起訴猶予とは、被疑者の事情、事件の内容、事件後の出来事などの様々な事情を考慮して行われる不起訴処分です。
後述のとおり、実務上最も多い不起訴の理由が起訴猶予であり、たとえば被害者と示談を締結した際などに行われることが多くあります。
次に、嫌疑不十分とは、その名のとおり犯罪の疑いが十分でない場合に行われる不起訴処分です。
裁判で有罪を立証できるほど証拠が揃っていない場合に行われると考えられます。
最後に、嫌疑なしとは、その名のとおり犯罪の嫌疑がない場合に行われる不起訴処分です。
たとえば、捜査を行った結果別の者が犯人であると判明した場合などがこれに当たります。
不起訴の理由の中で群を抜いて多いのは起訴猶予で、その割合は起訴などを含む全事件の5割強に及びます。
仮に罪を犯してしまったのが明らかであっても、示談などその後の弁護活動次第では不起訴となる可能性は少なからずあります。
弁護士に相談した際には、ぜひ不起訴の可能性がないか聞いてみるとよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に詳しい弁護士が、不起訴の可能性を含む事件の見通しを丁寧にお伝えします。
暴行事件を起こしてしまいお困りなら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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文書偽造罪で執行猶予②
文書偽造罪で執行猶予②
文書偽造罪と執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回の記事では後者を取り扱うので、文書偽造罪については前回の記事をご参照ください。
【ケース】
福島県郡山市に住むAさんは、スピード違反により免許証の効力が停止され、運転しようにも免許がない状態でした。
ある日、Aさんが市内を歩いていたところ、道路に免許証が落ちているのを見かけました。
そこで、免許証の顔写真、氏名、生年月日、住所を自身のものに貼り替え、あたかも自らの免許証であるかのような物を作成しました。
Aさんはそれを携帯して運転していましたが、検問の際に偽造した運転免許証であることを見破られ、公文書偽造罪などの疑いで逮捕されました。
Aさんと接見した弁護士は、執行猶予について説明しました。
(フィクションです。)
【執行猶予とは何か】
執行猶予とは、裁判で有罪となって刑が言い渡された際に、その刑の執行を一定期間見送るという制度です。
執行猶予には、刑の全部の執行が猶予される場合と、刑の一部のみ執行が猶予される場合とがあります。
一部の執行猶予については行われるケースがやや限定的なので、今回は全部の執行猶予について取り扱います。
【刑の全部執行猶予について】
刑の全部の執行猶予は、言い渡された刑が3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の場合に、情状(事件の内容や被告人の反省の程度など)により付されるものです。
執行猶予の期間は1年から5年であり、言い渡された懲役または禁錮の期間より長い期間が設定されるのが通常です。
初犯だけでなく前科がある場合も執行猶予となる余地がありますが、その要件は当然ながら厳しくなります(詳しくは刑法25条参照)。
刑の全部の執行猶予が言い渡された場合、裁判が終わったあとで直ちに刑務所に行くなどの事態は回避できます。
それだけでなく、執行猶予期間中に執行猶予の取消し(後述)がなされなければ、刑の言い渡しは効力を失い、刑を受ける必要はなくなるのです。
この点が執行猶予の最大のメリットと言っても過言ではないでしょう。
刑の全部の執行猶予は、一定の事情が生じた場合に取り消されるおそれがあります。
取消しの原因となる事情は以下のとおりです。
①必要的取消し(必ず執行猶予が取り消される)
・執行猶予期間中に罪を犯して死刑、懲役、禁錮のいずれかの刑(以下、「禁錮以上の刑」)に処せられ、その刑(死刑を除く)の全部について執行猶予がつかなかったとき
・執行猶予を言い渡される前に犯した罪につき禁錮以上に処せられ、その刑(死刑を除く)の全部について執行猶予がつかなかったとき
・執行猶予を言い渡される前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられた(刑の全部が執行猶予となった場合を除く)ことが発覚したとき
②裁量的取消し(場合により執行猶予が取り消される)
・執行猶予期間中に罪を犯し、罰金刑に処せられたとき
・保護観察に付せられた場合において遵守事項を破り、なおかつその情状が重いとき
・執行猶予を言い渡される前に他の罪について禁錮以上の刑に処され、その刑の全部が執行猶予となったことが発覚したとき
これらの要件から考えるに、執行猶予となったあとで真面目に社会生活を送っていれば、過去の犯罪が蒸し返されない限り執行猶予が取り消される可能性は低いと言えるでしょう。
以上からお分かりになるかと思いますが、執行猶予は何かと複雑なことが多く、その獲得に向けた活動も一筋縄ではいかないことがありえます。
もし執行猶予を目指すのであれば、やはり弁護士に事件を依頼して手厚いサポートを受けるのが賢明です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が、執行猶予に関するお悩みの解決に尽力します。
ご家族などが文書偽造罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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