窃盗罪の他、器物損壊罪と建造物侵入罪、そして牽連犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
福島県石川郡に住んでいる会社員のAさんは、無人販売店を訪れていました。
Aさんは店内に取り付けてある料金箱の留め具を壊し、壁から外してそのまま料金箱を持って無人販売店を去りました。
その後事件は警察に通報され、石川警察署の捜査でAさんが事件を起こしたとわかり、身元も判明しました。
そしてAさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんには建造物侵入罪と器物損壊罪の容疑もかけられています。
(この参考事件はフィクションです。)
窃盗罪
料金箱を盗んだAさんは窃盗罪だけでなく、刑法に定められたその他の罪も適用されました。
まず、窃盗罪は刑法235条に「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています。
窃取とは持ち主の意思に反して、財物を自己または第三者に物の占有(物に対する実質的な支配)を移すことを意味しています。
参考事件の場合、仮に盗んだ料金箱に現金が入っていなかったとして窃盗罪になります。
これは料金箱自体が商品代金を入れる目的で設置されているため、店主や店員が占有している物と判断できるからです。
そのためAさんには窃盗罪が適用されました。
そしてAさんには、さらに器物損壊罪と建造物侵入罪の容疑もあります。
器物損壊罪と建造物侵入罪
物を損壊させると適用されるのが、器物損壊罪です。
Aさんは料金箱を持ち去る際に、留め具を壊して外しています。
そのため、物を壊したAさんに器物損壊罪が適用されました。
そして次に建造物侵入罪です。
建造物侵入罪は、正当な理由もなく建造物に侵入すると適用されます。
開かれている店舗に入るのであれば「侵入」とは言えないのではないかと考える方もいると思われますが、Aさんの場合、店に入る際に買い物をする意思はありませんでした。
買い物をするつもりで入ってきたのであればそれは「正当な理由」であるといえますが、盗みを目的として店舗に入るのであれば、それは「侵入」していると判断されます。
以上のことからAさんには窃盗罪の他、器物損壊罪、建造物侵入罪が成立しました。
牽連犯
Aさんは盗みを目的として無人販売店に侵入し、料金箱の留め具を壊して料金箱を盗んでいます。
このように2つ以上の犯罪行為の間に、一方が他方の手段であるか、他方が一方の結果であるという関係が存在する場合、これを牽連犯と言います(刑法第54条)。
牽連犯は、それぞれの刑罰の中から、最も重い刑を適用します。
参考事件の場合、窃盗罪の他はそれぞれ、器物損壊罪は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」、建造物侵入罪は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が刑罰となっています。
そのため、Aさんに適用されるのは「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」である窃盗罪の刑罰です。
刑事事件では牽連犯のように、あまり一般的ではない用語が使われることも珍しくありません。
刑事事件を起こしてしまった際は、自身の刑罰がどうなるのか予測を立てるためにも、弁護士のアドバイスをもらうため法律相談を受けてみましょう。
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