器物損壊罪と不起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【ケース】
Aさんは、福島県福島市に住む知人のVさんがなかなか借金を返済してくれないことに腹を立て、Vさん宅の窓に向かって硬式野球のボールを投げました。
ボールは窓に直撃してガラスの破片が飛び散りましたが、日中でVさんが留守にしていたため怪我人はいませんでした。
その後、Vさん宅に仕掛けられていた防犯カメラの映像が決め手となり、Aさんは器物損壊罪の疑いで福島警察署にて取調べを受けることになりました。
もともと野球中の事故を装おうと考えていたAさんは、焦って弁護士に不起訴にできないか相談しました。
(フィクションです。)
【器物損壊罪について】
刑法
第二百六十一条
…他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(一部省略)
器物損壊罪は、他人の物(建造物、艦船、特定の内容の文書を除く)を「損壊」した場合に成立する可能性のある罪です。
器物損壊罪における「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為を指すとされています。
上記事例では、AさんがVさん宅に向かって野球用の硬球を投げ、窓ガラスを割っています。
このような行為は正に「損壊」と言えるため、Aさんは器物損壊罪として①3年以下の懲役、②30万円以下の罰金、③科料(1,000円以上1万円未満の金銭の納付)のいずれかが科されるおそれがあります。
ちなみに、窓ガラスのような建造物に付随する物が損壊されたケースでは、その物を建造物の一部と見て、器物損壊罪ではなく建造物損壊罪(刑法260条)が成立する余地があります。
裁判例には、工具を使うことで損壊することなく取り外しができた玄関ドアについて、外部との遮断、防犯、防風、防音などの機能上の重要性を重視して建造物損壊罪の成立を認めたものがあります。
【不起訴を目指すには】
刑事事件は、その全てが裁判になって最終的に刑罰が科されるというわけではありません。
中には、不起訴となって刑罰を科されることなく終了する事件が少なからずあります。
そのため、たとえ刑事事件を起こしてしまっても、一度冷静になって不起訴の可能性がないか弁護士に聞いてみることを心掛けるとよいでしょう。
不起訴の理由は多岐に渡りますが、その中でよく見られるものとして起訴猶予が挙げられます。
起訴猶予とは、検察官にとって起訴すれば有罪にできる見込みがあるものの、様々な事情を考慮して起訴を敢えて見送る処分です。
考慮される事情としては、①性格や来歴といった犯人に関する事情、②動機や軽重といった犯罪に関する事情、③犯罪後の情況が挙げられます
検察官により不起訴処分が下された場合、その事件は不起訴として終了したものとみなされ、よほどのことがない限り起訴されて裁判が行われることはなくなります。
起訴されなければ裁判で事件が公になることはありませんし、懲役や罰金などの刑罰も科されませんので、被疑者にとっては非常に有益と言えるでしょう。
器物損壊事件において起訴猶予による不起訴を目指すなら、やはり被害者との示談が重要になります。
示談により被害弁償や謝罪などの事実をアピールできれば、検察官としても積極的に処罰する必要はないとして不起訴にする可能性が高まるからです。
ただ、事件の張本人が直接示談交渉に及ぶことは、交渉の決裂や被害者からの不当な要求のリスクがあることから決しておすすめできません。
適正な内容の示談をできるだけ早く交わすなら、ぜひ法律の専門家である弁護士に示談交渉を依頼してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に特化した弁護士が不起訴の実現に向けて充実した弁護活動を行います。
器物損壊罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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