Archive for the ‘財産犯罪’ Category

【事例解説】通行人の手荷物を奪おうとした窃盗事件、いわゆるひったくりに適用される条文について

2024-10-05

ひったくりに適用される条文について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県相馬市に住んでいる大学生のAさんは、フルフェイスのヘルメットをかぶって、夕方に自転車で外出しました。
その後、手にカバンを持った女性Vさんを発見すると、後ろから近付きバッグを奪いました。
しかし、Vさんが「ひったくり」と大声を出したことで、Aさんの逃走先にいた通行人が犯行に気付きました。
そして立ちふさがって自転車を止めると、逃げようとするAさんを取り押さえ、警察に通報しました。
しばらくして警察官が現場に駆け付け、Aさんは相馬警察署に逮捕されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)

窃盗

歩行者に気付かれないよう近付き、持っている荷物を奪う窃盗事件がひったくりです。
ひったくりに適用されることが多いのは、刑法窃盗罪です。
刑法第235条がその条文で、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています。
財物」とは、所有権の対象となる有体物はほぼ該当します。
ただし、「電気」もこの条文では財物に含まれる他、経済的にも主観的にも価値が認められないものは財物に含まれないなどの例外もあります。
そして「窃取」とは、他人の財物に対する占有を、自身または第三者に転移させることです。
占有とは、財物に対する実質的な支配および管理を意味し、窃取による占有の転移は、占有者に意思に反して行われている必要があります。
そのため、Vさんの持っているバッグ(および中に入っている物)という財物を、Vさんの意思に反して窃取しようとしたAさんには、窃盗罪が成立します。
しかし、ひったくりに必ず窃盗罪が成立するわけではなく、事件の内容次第では強盗罪が成立します。

強盗

刑法第236条第1項には「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。」と、強盗罪が定められています。
参考事件の場合、AさんがVさんを突き飛ばしたり、荷物を手放さなかったVさんを引きずったりして荷物を奪っていれば、この条文の「暴行」の要件を満たします。
また、刑法第240条は「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。」とあります。
つまり、この暴行によって被害者が怪我を負ってしまうと、より重い強盗致傷罪が成立します。
さらに、窃盗罪に比べると強盗事件は逮捕されやすい傾向にあり、逮捕された後に勾留も付きやすく、勾留も長引きやすくなります。
そのため早期の釈放を目指すのであれば、弁護士の存在は必須と言えます。
ひったくりで逮捕されてしまった場合、速やかに弁護士に弁護活動を依頼することが重要です。

ひったくりに詳しい弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件および少年事件を中心に取り扱っています。
当事務所では初回であれば無料の法律相談逮捕または勾留中の方のもとへ弁護士が直接赴く初回接見サービスをご利用いただけます。
ご予約はフリーダイヤル「0120-631-881」にて、24時間体制で受け付けております。
ひったくり窃盗事件を起こしてしまった、またはご家族が強盗罪強盗致傷罪で逮捕されてしまった際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へ、お気軽にご連絡ください。

【事例解説】借りたレンタカーを返さず乗り回し横領罪で逮捕、一般的なイメージと異なる横領の定義

2024-09-07

横領罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県郡山市に住んでいる無職のAさんは、レンタカー会社からレンタカーを借りていました。
レンタカーの返却期限が迫っていましたが、Aさんはレンタカー会社に連絡せず、その後もレンタカーを乗り回し続けました。
レンタカーを貸していたレンタカー会社は、返却期限を1週間過ぎても返却に現れないAさんのことを不審に思いました。
そしてAさんに電話をしても出なかったため、警察に相談することにしました。
その後、郡山北警察署の警察官がAさんのもとを訪れ、横領罪の容疑でAさんを逮捕しました。
(この参考事件はフィクションです。)

横領罪

横領事件と聞くと、まず会社から現金を横領する事件だと思う人が大半だと思われます。
たしかに刑法はそのような横領の罪(業務上横領罪)も定めていますが、横領の対象は現金だけではありません。
刑法第252条第1項には「自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。」と横領罪単純横領罪)が定められています。
例えば窃盗罪は、他人が占有(管理・支配)している物をその占有者の意思に反して持ち出すと成立します。
しかし横領罪は、自分が占有しているが他人の物、つまり預けられたものを持ち出した時に成立します。
そのことから横領罪では、あくまで他人に物であり、委託信任関係に基づいて自己に占有された物を対象にしています。
一時的に他人から借りている、管理を任されている物であれば現金以外でもよく、不動産なども横領罪における「他人の物」に含まれます。
Aさんの場合、まずレンタカー会社と契約し、一時的にレンタカーを借りている状態です。
にも関わらずその期間を過ぎても返さないのであればそれは横領行為であり、Aさんには横領罪が成立します。

弁護活動

横領罪は「5年以下の懲役」のみが定められています。
そのため罰金を支払って済ませることができず、起訴されてしまえば正式な裁判が開かれてしまいます。
裁判を避けるためには弁護士による弁護活動が必要です。
示談交渉は特に重要であり、被害者への謝罪と弁償を行い示談が締結できれば、不起訴処分の可能性もあります。
示談交渉は個人で行うことも可能です。
しかし、横領した本人が直接示談交渉をした場合、かえって拗れてしまうこともあります。
また、会社などの法人が被害者である場合、弁護士を通さなければ示談交渉には応じないと断られてしまうことも多々あります。
横領事件の際はまず弁護士に依頼し、弁護士を間に入れて示談交渉を進めることが、示談をスムーズに締結させる鍵と言えます。

まずは弁護士にご相談ください

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を中心に取り扱う法律事務所です。
当事務所のフリーダイヤルでは、初回無料の法律相談の他、逮捕・勾留されている方のもとへ弁護士が直接赴く初回接見サービスをご予約いただけます。
フリーダイヤルは24時間体制で、土、日、祝日も対応可能です。
横領事件の当事者となってしまった方、横領罪の容疑でご家族が逮捕・勾留中の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のフリーダイヤル「0120-631-881」へ、お気軽にご連絡ください。

【事例解説】ナイフを突きつけて脅す強盗事件での逮捕、強盗罪の種類と示談交渉で弁護士を入れるメリット

2024-08-10

強盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県相馬郡に住んでいる会社員のAさんは、お金に困っていたことで強盗を計画していました。
Aさんはあまり使われない夜道で通行人Vさんを見つけると、相手の口を抑えて包丁を見せながら「サイフを出せ」と脅しました。
そしてVさんがサイフをバッグから出すと、Aさんはサイフを奪いそのまま逃走しました。
Aさんが逃げた後Vさんはすぐに警察に行き、被害届を提出しました。
相馬警察署が捜査を進めたところ、犯人はAさんであることが分かりました。
その後Aさんは強盗罪の容疑で逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

強盗罪

Aさんの逮捕容疑になったのは、刑法に定められている強盗罪です。
刑法第236条1項には「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。」と定められ、続く同条第2項には「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」と定められています。
強盗罪における暴行は人に対して有形力(物理力)を行使することで、脅迫は一般的に人を恐怖、畏怖させるに足りる害悪の告知をすることです。
これらはそれぞれ暴行罪脅迫罪になる行為と同じになります。
そしてこれらには相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の強度が求められます。
先述のように刑法第236条における強盗罪は2つあり、それぞれ1項強盗2項強盗と呼ばれます。
1項強盗は物などの財物を奪うことで成立します。
2項強盗は財産上の利益が対象です。
財産上の利益とは財物ではない利益のことで、債権や料金の支払いを免れることが該当します。
例えばタクシーに乗ったにも関わらず、暴力を振るって支払いを免れた場合は、「財産上不法の利益を得」たと言えます。
Aさんの場合まず相手の口を抑えており、この行為は暴行と考えられます。
包丁を見せての脅しですが、凶器を示しての脅迫は相手方の反抗を抑圧するに足りるとされています。
そのためこれらの方法を用いてVさんからサイフという財物を奪ったAさんには刑法第236条第1項強盗罪が成立します。

示談交渉

強盗事件の弁護活動では、示談交渉が重要になります。
示談を締結することができれば、減刑が期待でき、執行猶予の獲得も目指すことができます。
しかし、参考事件のように全く面識のない通行人が被害者である場合、個人で被害者を調べて示談交渉を持ちかけるのは不可能に近いです。
また、警察が被害者の情報を明かすことは基本的にありません。
ですが弁護士であれば、弁護士限りで連絡を取り合うことを条件に警察から被害者の連絡先を聞くことができます。
また、最初は示談交渉を拒否している場合でも、弁護士が間に入るのであればと示談を進めることが可能になったケースもあります。
そのため示談の締結を目指すのであれば、弁護士に弁護活動を依頼し、示談交渉を進めることが重要です。

強盗罪に詳しい弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件と少年事件に特化している法律事務所です。
当事務所のフリーダイヤル「0120-631-881」では、初回無料の法律相談および逮捕された方のもとへ弁護士が直接赴く初回接見サービスのご予約を受け付けております。
フリーダイヤルは24時間、365日対応可能です。
強盗事件の当事者になってしまった方、強盗罪の疑いでご家族が逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へ、是非、ご相談ください。

【事例解説】借金があると嘘を吐いて振り込ませたインターネット上の詐欺事件。弁護士が重要になる示談交渉

2024-05-18

詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県二本松市に住んでいる会社員のAさんは、SNS上でVさんと知り合いました。
AさんはVさんと親交を深めると、「実は借金をしてしまって困っているんだ」と嘘を言いました。
Vさんは協力したいと言ったため、AさんはVさんに自身の口座番号を教えて20万円を振り込むように言いました。
VさんはAさんの口座に振り込みましたが、その後Aさんと連絡が取れなくなり、Vさんは不審に思って警察に相談しました。
その後、二本松警察署の捜査によってAさんの身元が割れ。詐欺罪の疑いでAさんは逮捕されることになりました。
(この参考事件はフィクションです。)

詐欺事件

詐欺罪刑法に定められた非常に重大な犯罪です
刑法第246条第1項には、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
人を欺いて」とは欺罔行為を行うということであり、詐欺罪の成立にはこれが必要不可欠です。
欺罔行為(欺く行為)とは、誤った情報をあえて提供し、被害者に誤った判断基準を思い抱かせる行為のことです。
この欺罔行為によって被害者が錯誤(思い違い、勘違い)に陥り、被害者がその誤った情報をもとに財産の処分行為を行います。
これらの行為が因果関係を持った一連の流れとしてあり、結果として行為者または第三者が実財物か財産上の利益を取得することで、詐欺罪は成立します。
参考事件の場合、AさんはVさんに「借金がある」と言う嘘を吐いており、これが欺罔行為にあたります。
そしてVさんはその情報によって錯誤に陥り、現金20万円を振り込む財産の処分行為を行っているため、Aさんには詐欺罪が適用されました。

インターネットの詐欺事件

詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」であり、罰金刑が定められていない非常に重いものになっています。
詐欺事件は被害者が存在する事件であるため、重要なのは被害者との示談交渉です。
示談が締結できれば刑罰を軽くするように求めることができ、事件の内容や金額にもよりますが、不起訴処分の獲得も視野に入ります。
しかし、参考事件のようなインターネットを利用した詐欺事件では、被害者の連絡先を知らないことがほとんどです。
警察は基本的に被害者の情報を教えることはありませんが、弁護士限りで連絡を取ることを条件にすれば、弁護士が連絡先を聞き、示談交渉が進められるようになる可能性があります。
仮に被害者の連絡先を知っていたとしても、詐欺事件にあったことで被害者が警戒し、連絡を取ってもらえない可能性が高いです。
詐欺事件において、示談交渉で間に入る弁護士の存在は非常に重要です。
被害者との示談交渉をお考えの際は、刑事事件に詳しい弁護士に依頼することをお勧めいたします。

刑事事件に詳しい法律事務所

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件及び少年事件を中心に取り扱っている法律事務所です。
当事務所では、初回であれば無料の法律相談逮捕されている方のもとへ直接弁護士が赴く初回接見サービスをご利用いただけます。
フリーダイヤルは24時間365日、ご予約が可能です。
参考事件のように詐欺事件を起こしてしまった方、または詐欺罪の容疑で逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のフリーダイヤル「0120-631-881」へ、是非、ご連絡ください。

【事例解説】コンビニ強盗の際に負傷者を出し強盗致傷罪、裁判員裁判が開かれる事件とは

2024-05-11

強盗致傷罪と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県郡山市に住んでいる会社員のAさんは、包丁を持って夜中家を出ました。
客のいないコンビニに入ると、店員に対して包丁を出し「金を出してバッグに入れろ」と脅しました。
そして店員が現金を入れ終えたのでバッグをとろうとすると、裏手から現れた別の店員がAさんから包丁を取り上げようとしました。
Aさんは店員を振りほどこうと暴れ、その際に店員は包丁で手に怪我を負いましたが、Aさんは店員に取り押さえられました。
店員が警察に通報し、ほどなく郡山北警察署の警察官が現れ、Aさんは強盗致傷罪の疑いで現行犯逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

強盗事件

強盗致傷罪の解説の前に、まずは同じく刑法に定められた強盗罪の解説をします。
強盗罪刑法第236条第1項に「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。」と定められ、続く第2項には「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」と定められています。
この場合の暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の強度のものである必要があり、凶器を見せての脅迫は反抗を抑圧すると判断されます。
Aさんは包丁を持って脅迫し、現金を要求しているため、この時点で第1項強盗罪に該当します。
しかし、Aさんは持っていた包丁で店員の手に怪我を負わせたため、強盗致傷罪が成立しました。
刑法第240条は「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。」と定めており、この「負傷させたとき」が強盗致傷罪です(「死亡させたとき」は強盗致死罪になります)。
また、故意に人を負傷、死亡された場合はそれぞれ強盗傷人罪強盗殺人罪になり、より刑罰も重いものになります。
Aさんの場合、振りほどこうとした際に店員が怪我をしたケースであることから、傷害の故意はないと判断され強盗致傷罪にとどまりました。

裁判員裁判

強盗致傷罪の刑罰には「無期の懲役」が含まれており、この場合に裁判が開かれると、裁判員裁判となります。
裁判員裁判は、国内からランダムに選出され裁判員となった一般の方が、裁判に参加する形式の裁判です。
その形式上、法律に詳しくない方が選出されるため、他の裁判には無い手続きが多くなります。
裁判員裁判では公判の前に裁判官、検察官、弁護士が集まり、事件の争点をわかりやすくするための手続きをとります。
これを公判前整理手続と言います。
弁護士はこの他にも、裁判員の選出に立ち会ったりもします。
これは不公平な裁判となってしまわないよう、裁判員候補者をチェックするためです。
通常の裁判にない手続きも多ため、強盗致傷罪のように裁判員裁判となる事件では、裁判員制度にも詳しい弁護士が必要です。

裁判員裁判に強い弁護士

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件に特化している法律事務所です。
当事務所はフリーダイヤル「0120-631-881」にて、初回であれば無料の法律相談逮捕・勾留された方へ直接弁護士が伺う初回接見サービスのご予約を受け付けております。
フリーダイヤルは24時間365日対応していますので、強盗致傷罪で逮捕された、または裁判員裁判対象事件の当事者となってしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へ、是非、ご相談ください。

窃盗事件を起こして逮捕、窃盗を行うために他の犯罪に該当したらその刑罰はどうなるのか

2024-04-13

窃盗罪の他、器物損壊罪と建造物侵入罪、そして牽連犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県石川郡に住んでいる会社員のAさんは、無人販売店を訪れていました。
Aさんは店内に取り付けてある料金箱の留め具を壊し、壁から外してそのまま料金箱を持って無人販売店を去りました。
その後事件は警察に通報され、石川警察署の捜査でAさんが事件を起こしたとわかり、身元も判明しました。
そしてAさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんには建造物侵入罪器物損壊罪の容疑もかけられています。
(この参考事件はフィクションです。)

窃盗罪

料金箱を盗んだAさんは窃盗罪だけでなく、刑法に定められたその他の罪も適用されました。
まず、窃盗罪刑法235条に「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定められています。
窃取とは持ち主の意思に反して、財物を自己または第三者に物の占有(物に対する実質的な支配)を移すことを意味しています。
参考事件の場合、仮に盗んだ料金箱に現金が入っていなかったとして窃盗罪になります。
これは料金箱自体が商品代金を入れる目的で設置されているため、店主や店員が占有している物と判断できるからです。
そのためAさんには窃盗罪が適用されました。
そしてAさんには、さらに器物損壊罪建造物侵入罪の容疑もあります。

器物損壊罪と建造物侵入罪

物を損壊させると適用されるのが、器物損壊罪です。
Aさんは料金箱を持ち去る際に、留め具を壊して外しています。
そのため、物を壊したAさんに器物損壊罪が適用されました。
そして次に建造物侵入罪です。
建造物侵入罪は、正当な理由もなく建造物に侵入すると適用されます。
開かれている店舗に入るのであれば「侵入」とは言えないのではないかと考える方もいると思われますが、Aさんの場合、店に入る際に買い物をする意思はありませんでした。
買い物をするつもりで入ってきたのであればそれは「正当な理由」であるといえますが、盗みを目的として店舗に入るのであれば、それは「侵入」していると判断されます。
以上のことからAさんには窃盗罪の他、器物損壊罪建造物侵入罪が成立しました。

牽連犯

Aさんは盗みを目的として無人販売店に侵入し、料金箱の留め具を壊して料金箱を盗んでいます。
このように2つ以上の犯罪行為の間に、一方が他方の手段であるか、他方が一方の結果であるという関係が存在する場合、これを牽連犯と言います(刑法第54条)。
牽連犯は、それぞれの刑罰の中から、最も重い刑を適用します。
参考事件の場合、窃盗罪の他はそれぞれ、器物損壊罪は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」、建造物侵入罪は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が刑罰となっています。
そのため、Aさんに適用されるのは「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」である窃盗罪の刑罰です。
刑事事件では牽連犯のように、あまり一般的ではない用語が使われることも珍しくありません。
刑事事件を起こしてしまった際は、自身の刑罰がどうなるのか予測を立てるためにも、弁護士のアドバイスをもらうため法律相談を受けてみましょう。

刑事事件の際はご相談ください

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件(および少年事件)を中心に取り扱う法律事務所です。
当事務所では初回の法律相談を、無料で実施しております。
逮捕(または勾留)されている方には、弁護士が直接留置施設に伺う初回直接接見サービスをご利用いただけます。
どちらのご予約も年中無休、24時間体制で対応しておりますので、ご家族が窃盗事件を起こして逮捕されてしまった方、窃盗罪器物損壊罪建造物侵入罪などの容疑がかかっている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のフリーダイヤル「0120-631-881」へ、お気軽にご相談ください。

会社のお金を横領、経理の立場を利用した業務上横領罪で逮捕

2024-03-02

業務上横領罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県いわき市に住んでいる会社員のAさんは、同市内にある会社で経理を担当していました。
Aさんは不正に自分の口座に現金を振り込むなどして会社のお金を横領していました。
しかし、用途不明の支出があったことから会社が調査を行い、結果、Aさんのした横領が発覚しました。
会社は警察に被害届を提出し、その後Aさんは業務上横領罪の疑いでいわき東警察署に逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

業務上横領罪

業務上横領罪は、刑法に3種類が定められた横領の罪の1つです。
横領の罪は他に、(単純)横領罪遺失物等横領罪が定められています。
刑法第253条がその業務上横領罪を規定しており、その内容は「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。」となっています。
この条文における「業務」は、「人が社会生活上の地位に基づき、反復継続して行う行為」のことであり、ボランティアや慣例といった仕事ではない行為もここでは「業務」に該当します。
そして「占有」とは物に対する事実的支配を意味しています。
業務上横領罪においては、物理的な所持だけでなく財産の処分権限などの法的支配関係も含んでおり、業務上の委託信頼関係に基づく財物の支配も「占有」に入ります。
Aさんは会社から経理としてお金の管理を任せられており、これは業務上Aさんが占有している会社の財物です。
そのため会社のお金を許可なく動かし、自身の口座に振り込んだAさんの行為は、業務上横領罪に該当します。

業務上横領罪は「10年以下の懲役」という非常に重い刑罰が規定されています。
これは業務上横領罪が犯人と多数人の信頼関係を破るものであり、その法益侵害は範囲が広く深刻だと判断されているからです。
(単純)横領罪が「5年以下の懲役」であり、遺失物等横領罪が「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」であることから、その他の横領の罪と比べ業務上横領罪の罰則規定が厳しいものであることが分かります。

執行猶予の獲得

刑法第25条には執行猶予を獲得する条件が定められており、その中には「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡し」というものがあります。
業務上横領罪は、会社の処罰感情が強くなりやすく横領した金額が多いほど言い渡される処分が重くなりやすいことから、3年以下の拘禁刑で済まないケースも珍しくありません。
しかし弁護士に依頼し示談交渉などの弁護活動を行うことで、減刑による執行猶予の獲得を目指すことができます。
また、会社などの法人に対する示談交渉は、弁護士を通さないなら受けられない場合もあります。
そのため業務上横領罪で事件を起こしてしまった際は、示談交渉の知識と経験が豊富な弁護士に弁護活動を依頼することをお勧めいたします。

業務上横領事件の際はご相談ください

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件、少年事件を中心に取り扱っている弁護士事務所です。
当事務所では初回無料でご利用いただける法律相談の他、逮捕されてしまった方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービスを実施しております。
どちらのご予約もフリーダイヤル「0120-631-881」にて、24時間受け付けております。
業務上横領罪で事件を起こしてしまった方、またはご家族が業務上横領罪の疑いで逮捕、勾留されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のへ、是非、ご相談ください。

事故を起こしたと偽り、保険金を騙し取る保険金詐欺

2024-01-13

保険金詐欺と詐欺罪の条文について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県相馬市に住んでいる会社員のAさんは、自身の所有している自動車を土手の下に落として保険会社に連絡しました。
そしてAさんは単独事故を装い、保険会社から修理費として自動車保険金を騙し取りました。
しかしその後も保険会社は事故の調査を続けていたため、事故と言うには不自然な点を見つけ、警察に相談していました。
その後、Aさんが事故にあった訳ではないと分かり、Aさんは詐欺罪の疑いで相馬警察署に逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

保険金詐欺

Aさんのした行為は保険金詐欺と呼ばれるものです。
これは事故や災害にあったと装い、保険会社から保険金を騙し取る詐欺事件の俗称となります。
保険金詐欺にはその名の通り、刑法に定められた詐欺罪が適用されます。
現金を騙し取るタイプの詐欺事件に成立する詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」とある刑法第246条第1項詐欺罪です。
現金などの財物を騙し取った場合に成立するもので、1項詐欺と呼ばれます。
財物ではなく財産上の利益を得る、例えば有料のサービスを受けた後に代金の支払いを免れる詐欺事件には、「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」と定められた刑法第246条第2項が成立します。
こちらは1項詐欺と区別して2項詐欺と呼ばれています。
どちらの詐欺罪にしても、「人を欺く」こと、つまり欺罔行為が要件です。
欺罔行為とは、財産処分の判断の基礎となる重要な事項に関して、思い違いや勘違い(錯誤)を生じさせる行為のことです。
この欺罔行為によって生じた錯誤から、被害者が財産の処分行為を行い、その結果として行為者または第三者が財物または財産上の利益を取得に繋がる。
この一連の流れが存在する時に詐欺罪は成立します。
参考事件の場合、まず保険会社に対して事故にあったと嘘をついたAさんの欺罔行為があります。
そして保険会社にAさんが事故にあったという錯誤が発生し、保険金を渡すという財産の処分行為が行われました。
以上のことから、Aさんの逮捕容疑は1項詐欺に該当する詐欺罪になります。

詐欺事件の弁護活動

詐欺罪の刑罰は、罰金刑のない「10年以下の懲役」という重いものになっているため、減刑や執行猶予がなければ刑務所へ服役になる可能性が高いです。
そのため被害者と示談交渉を行い、示談を締結して減刑や執行猶予を目指すことが重要ですが、保険金詐欺の場合、被害者は会社になります。
個人ではなく、会社などの法人に対して示談交渉を行う場合、弁護士がいなければ示談交渉に応じてもらえないこともあります。
個人での示談が可能であっても、弁護士は示談交渉の知識と経験が豊富なため、依頼することでよりスムーズな示談締結が望めます。
参考事件のような詐欺事件の際は、詐欺事件に詳しい弁護士に相談し、アドバイスを求めることが大切です。

刑事事件を扱う弁護士事務所

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を中心に取り扱う弁護士事務所です。
当事務所ではフリーダイヤル「0120-631-881」にて、初回であれば無料の法律相談逮捕・勾留された方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスのご予約を、24時間体制で受け付けております。
保険金詐欺の当事者となってしまった、またはご家族が詐欺罪の容疑で逮捕されてしまった場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のへ、是非、ご相談ください。

暴行されたことを理由に慰謝料を請求し、恐喝罪となって逮捕

2023-12-23

恐喝罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県白河市に住んでいる会社員のAさんは、同僚のVさんと口喧嘩になった際に顔を殴られました。
そのことでAさんはVさんに、「警察に通報する、金を払えば水に流してやる」と言って脅しました。
VさんはAさんの要求を呑みましたが、友人に脅されたことを相談し、警察に被害届を出すことに決めました。
その後、Aさんは恐喝罪の疑いで白河警察署に逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)

恐喝罪

恐喝罪刑法に定められた犯罪であり、Aさんに適用されたのは「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と定められた刑法第249条第1項の条文です。
この条文でいう「恐喝」とは、暴行または脅迫を手段として被害者を畏怖させ、その畏怖した心理状態で財物を交付させることを意味します。
また、財物以外の利益(サービスの提供など)を要求する場合は刑法第249条第2項に定められた「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」の条文が適用されます。
この暴行と脅迫は、被害者の反抗を抑圧するほどの強度を持たない、つまり抵抗ができないほどのものではない必要があります。
暴行・脅迫が反抗を抑圧する強度である場合は、より重い罪である強盗罪刑法第236条)が適用されてしまうことになります。
例えば、生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知して金品を要求する脅迫を行えば恐喝罪となりますが、ナイフなどの凶器を示しながら上記の脅迫を行った場合は強盗罪となります。
参考事件の場合、AさんはVさんに暴力を振るわれているため、実際に暴行罪または傷害罪で被害届を出すことはできます。
しかし、脅迫の内容はそれ自体が違法である必要はなく、財物を交付させるための不当な手段として用いれば、違法でなくとも恐喝罪となります。
そのため被害届を提出することをほのめかし、金銭を要求したAさんには、恐喝罪が成立します。

恐喝罪の弁護活動

恐喝罪は刑罰に罰金刑の定めがないため、有罪判決となってしまうと刑務所に服役する可能性が高い非常に重い犯罪です。
実刑判決を避けるためには被害者に対して被害額の弁償などを行い、示談を締結することが重要です。
しかし、恐喝事件はその性質上被害者が恐怖心を抱きやすく、連絡しても示談交渉に応じてもらえないことも考えられます。
そのため示談交渉の知識と経験が豊富な弁護士に相談し、弁護活動を依頼することが、スムーズに示談を締結させるための鍵です。

示談交渉は弁護士にお任せを

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件および少年事件を中心に扱っている弁護士事務所です。
初回であれば無料の法律相談逮捕・勾留されている方のもとに弁護士が直接伺う初回接見サービスなどを、当事務所ではご利用いただけます。
ご予約はどちらもフリーダイヤル「0120-631-881」にて受け付けておりますので、恐喝事件を起こしてしまった方、またはご家族が恐喝罪の疑いで逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のへ、是非、ご相談ください。

盗んだ後に暴行・脅迫、窃盗に留まらず強盗事件に

2023-10-28

事後強盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

福島県伊達市に住んでいる大学生のAさんは、市内にある公園で置き忘れのカバンを発見しました。
Aさんはカバンの中にあった財布を取り出し、中身を確認すると現金を抜き取って懐に入れました。
しかし、そこにカバンの持ち主であるVさんが戻ってきて、Aさんが現金を盗ったことを指摘し、返すように要求しました。
焦ったAさんはVさんを蹴り、Vさんが倒れたところを確認するとその場から逃走しました。
その後、Vさんは警察に事件のことを通報しました。
しばらくして伊達警察署の捜査によりAさんの身元が判明し、Aさんは事後強盗罪の容疑で逮捕されました。

(この参考事件はフィクションです。)

事後強盗罪

前回のブログで一般的なイメージの強盗事件とは少し違った強盗事件を紹介しました。
そして今回もあまり一般に馴染みのない強盗事件を紹介したいと思います。
それが参考事件にもある事後強盗罪です。
刑法第238条には「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」と定められており、これが事後強盗罪の条文です。
強盗罪は暴行・脅迫を用いて財物や財産上の利益を得ようとすると適用される犯罪であり、手段として暴行や脅迫が使われます(刑法第236条)。
その強盗罪とは順序が逆になるのが事後強盗罪であり、まずは窃盗にあたる行為が最初にあります。
そして盗んだ物を守るために逃走、または窃盗を行った証拠の隠滅を図ろうとして暴行・脅迫が行われる、これが事後強盗罪の適用される流れになります。

示談交渉の重要性

事後強盗罪の条文には「強盗として論ずる。」と定められています。
そのため法定刑は強盗罪と同じ「5年以上の有期懲役」となり、実刑判決となるリスクの高い犯罪です。
被害者が存在する事件の場合、刑務所への服役を避けるためには示談交渉が重要になります。
被害者と示談を締結することができれば、減刑の可能性は高まり、執行猶予の獲得が視野に入ります。
しかし、参考事件のように被害者が知り合いなどでない場合、個人で連絡を取って示談することはほぼ不可能であり、警察も被害者の連絡先を犯人に教えることもまずありえません。
そのためスムーズに示談交渉を進めるためには、刑事事件に詳しい弁護士に弁護活動を依頼することが必要です。

強盗事件の際は相談を

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を含む刑事事件を専門に取り扱っている法律事務所です。
当事務所はフリーダイヤル「0120-631-881」にて、初回であれば無料の法律相談や、逮捕されている方のもとに直接弁護士が赴く初回接見サービスをご予約いただけます。
強盗事件を起こしてしまった方、またはご家族が強盗事件の当事者となってしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へお気軽にご相談ください。

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