殺人未遂罪で逮捕

Aさんは、福島県いわき市において、交際相手であるVさんと同居しました。
ある日、AさんはVさんが浮気していることを知り、Vさんにどういうことなのか問い詰めました。
すると、Vさんが謝罪するどころか反発してきたことから、AさんはVさんの首を絞めました。
その際、Aさんは怒りで冷静さを失っており、Vさんを殺害しようなどとは思っていませんでした。
Vさんの苦しむ姿を見てAさんが咄嗟に手を離したところ、Vさんは「警察に行ってくる」とだけ言い残してAさん宅を出ました。
後日、Aさんは殺人未遂罪の疑いでいわき中央警察署に逮捕されました。
Aさんと初回接見を行った弁護士は、Aさんから黙秘権について質問を受けました。
(フィクションです)

【殺人未遂罪について】

刑法(一部抜粋)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第二百三条 第百九十九条及…の罪の未遂は、罰する。

殺人未遂罪は、人を殺そうと行為に及んだものの、結果的に殺すに至らなかった場合に成立する可能性のある罪です。
本来、犯罪は特定の権利や利益を侵害した場合に成立するものであり、そうした結果が生じなければ犯罪として処罰されないのが原則です。
ですが、殺人未遂罪に関しては、殺人の危険を生じさせること自体が処罰に当たるとして規定が置かれています。
このように、未遂罪というのは特定の犯罪に限って存在し、全ての犯罪の未遂がもれなく罰せられるわけではありません。

殺人未遂罪と成立要件が重なる罪として、暴行罪と傷害罪が挙げられます。
これらの罪との区別は、①行為に人を殺す危険性が認められるか、②行為の際に殺すつもり(殺人の故意、殺意)があったか、の2点によります。
これらのいずれか一方でも欠ければ、殺人未遂罪は成立せず、上記の暴行罪か傷害罪が成立するにとどまるでしょう。
上記事例では、AさんがVさんの首を絞めているものの、AさんにVさんを殺すつもりがあったわけではありません。
そうすると、上記①は認められる一方、②は認められず、結果的に殺人未遂罪は成立しないと考えられます。
ただし、注意すべき点として、「殺すつもりはなかった」という供述から直ちに殺人の故意が否定されるわけではないことが挙げられます。
裁判において、人の内面は行為の内容や従前の関係などの客観的な事情から推認されるものです。
ですので、たとえ上記のような供述をしても、他の事情から殺人の故意が認定される可能性は拭えないのです。

【黙秘権の活用法】

日本国憲法とそれを受けた各種法律は、自己が刑事上の責任を問われる事項について供述を拒む権利を認めています。
これが黙秘権であり、刑事事件においては被疑者・被告人に認められている非常に重要な権利の一つと言えます。

黙秘権の内容はシンプルですが、その使いどころはなかなか難しいものです。
黙秘権を行使するメリットとして、被疑者・被告人本人の供述という有力な証拠を捜査機関に与えない点が挙げられます。
犯行に及んでいれば証拠不十分による不起訴や無罪を狙えますし、無実であれば虚偽の自白や誘導による誤った供述を回避できます。
一方で、黙秘権を行使するデメリットとして、捜査機関や裁判所に否定的な評価を与えるおそれがある点です。
たしかに黙秘権はれっきとした権利なのですが、それを行使すると「反省の態度が見られない」などと思われるのが実情です。
これにより、逮捕・勾留による長期の身柄拘束を招いたり、有罪となった際に刑が重くなったりすることがありえるのです。
以上の点から、黙秘権行使の是非を検討するに当たっては、個々の事案におけるメリットとデメリットを天秤にかける必要があります。
ですので、もし黙秘権の行使を検討されるのであれば、いったん弁護士に相談されることを強くおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件のプロである弁護士が、黙秘権に関するお悩みに対して的確なアドバイスを致します。
ご家族などが殺人未遂罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

初回法律相談:無料

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー