Archive for the ‘少年事件’ Category

中学生の業務妨害罪

2019-08-31

福島県南会津郡に住む中学3年生のAさんは、夏休みに自宅で友人と遊んでいた際、じゃんけんで負けた人が罰ゲームをすることになりました。
その罰ゲームの内容は、近所にあるピザ屋に連絡し、適当な住所を言ってピザを5枚注文するというものでした。
じゃんけんの結果、Aさんが罰ゲームをすることになり、上記内容を実行しました。
その後、住所が存在しなかったことからピザ屋の店員が嘘だと気づき、南会津警察署に相談しました。
これにより、Aさんは偽計業務妨害罪の疑いで取調べを受けることになったため、Aさんの親が弁護士に今後の流れを聞きました。
(フィクションです)

【業務妨害罪について】

刑法233条は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、…その業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と定めています。
また、234条において、「威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による」としています。
これらがいわゆる業務妨害罪の規定です。
業務妨害というと、店などの利益を低下させたことによる損害賠償を想定するかもしれませんが、上記のとおり刑事上の責任も問われる可能性があるのです。

先ほど引用した業務妨害罪の規定は、233条が偽計業務妨害罪、234条が威力業務妨害罪に関する規定です。
簡単に言えば、他人に対する嘘や他人による勘違いなどを利用するのが偽計業務妨害罪、暴行や怒号などを利用するのが威力業務妨害罪です。
条文には「業務を妨害した」とありますが、売上の低下や業務の停滞などの実害は必ずしも生じる必要がないと考えられています。
ですので、円滑な業務を妨げる危険性さえ認められれば、偽計や威力のみをもって業務妨害罪が成立する可能性があります。

上記事例では、Aさんがピザ屋に対し、適当な住所を言ってピザを注文しています。
このような行為は、本来ピザを注文するつもりがないのにそのように装うものであり、なおかつ本来不要な調理を求めるものです。
そうすると、「偽計」を用いて「業務を妨害した」として、Aさんの行為は偽計業務妨害罪に当たると言えるでしょう。
法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金ですが、後述のとおりAさんには刑罰が科されません。

【少年事件における処分】

罪を犯した者が20歳未満の者に当たる場合、少年事件として成年による通常の刑事事件とは異なる取り扱いがなされます。
以下では、上記事例のAさんについて、今後どのような流れで処分が下されるのか簡単に見ていきます。

まず、警察官と検察官が捜査を行う段階においては、基本的に通常の刑事事件と大きく異なりません。
取調べで捜査機関に呼び出されることもありますし、事案の内容によっては逮捕および勾留による身柄拘束がなされます。
ただし、長期の身柄拘束である勾留の請求については、「やむを得ない場合」でなければならないと少年法に定められています。

事件の捜査が終了すると、罪を犯したとされる少年は家庭裁判所に送致されることになります。
少年事件の場合、裁判で有罪となって刑罰を科されたり、逆に裁判が開かれず不起訴で事件が終了したりすることはありません。
これは種々の政策を通して少年の健全な育成を達成するという趣旨に則っており、少年事件最大の特徴と言えます。

事件の送致を受けた家庭裁判所は、面談などを通して少年の資質、性格、能力などを把握し、必要に応じて少年審判という裁判に代わる手続を行います。
少年審判が開かれた場合、①不処分、②保護観察、③児童自立支援施設または児童養護施設送致、④少年院送致のいずれかが選択されます。
②から④をまとめて保護処分と呼び、事件の内容や、その時点における少年の更生の可能性などを主に考慮して決定されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件の経験豊富な弁護士が、少年事件に関する疑問に丁寧にお答えします。
お子さんが業務妨害罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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高校生が通貨偽造罪で逮捕

2019-08-21

福島県田村郡に住むAさん(16歳)は、両親がお金に厳しく、月に1000円程度しか小遣いがありませんでした。
そのため、友人からの遊びの誘いをいつも断っており、そのたびにお金が満足に使えないことを疎ましく思っていました。
そこで、自宅のプリンターを用いて1万円札をカラーで印刷し、それを財布に入れていました。
ある日、Aさんがその偽札を使ってコンビニで買い物をしたところ、その翌日に店員が偽札であることに気づいて警察に通報しました。
これにより、家宅捜索が行われたうえで、Aさんは通貨偽造罪の疑いで田村警察署に逮捕されました。
逮捕の知らせを受けたAさんの母親は、少年院に行くことになるのか弁護士に尋ねました。
(フィクションです)

【通貨偽造罪について】

通貨偽造罪は、「行使の目的」で通貨(日本で使用できる硬貨や紙幣)を「偽造」した場合に成立する可能性のある罪です。
簡単に言えば偽物のお金をつくった際に成立する罪ですが、少し複雑な罪なので詳しく解説していきます。

まず、「行使の目的」とは、偽造したものを真正な通貨として流通させる目的を指します。
このことから、たとえば学校の授業の教材として利用するために偽札をつくった場合には、通貨偽造罪は成立しないと考えられます。
次に、「偽造」とは、権限のない者が通貨に似た見た目のものを作成することを指します。
ただし、既にある通貨に加工を加えた場合は「偽造」ではなく「変造」となり、通貨偽造罪ではなく通貨変造罪に当たります。
とはいえ、罪名こそ違えど法定刑は同じなので、この違いが処分の結果に大きく影響するケースは多くないでしょう。

上記事例のAさんは、買い物などに使用する目的で、1万円札をカラープリントしています。
そうすると、「行使の目的」で「通貨」を「偽造」したと言えることから、Aさんには通貨偽造罪が成立すると考えられます。
更に、これをコンビニで使用していることから、偽造通貨行使罪も併せて成立することが見込まれるでしょう。
ちなみに、仮にAさんによる偽造が雑で、偽札の出来が一般人を誤信させるに至らないものだった場合、通貨偽造罪は成立しない余地が出てきます。
ただ、その場合には、通貨及証券模造取締法という法律により別途罰せられる可能性があるため注意が必要です。

【少年院送致とは】

上記事例のAさんは少年(20歳未満の者)であることから、通常の刑事事件ではなく少年事件として手続が進む可能性が高いです。
少年事件の特色というのはいくつか挙げられますが、中でも最も重要なのは最終的な処分です。
少年事件の場合、少年に適切な措置を施して正しい道へ導くという趣旨から、刑罰ではなく保護処分というものが行われることになっています。
この保護処分には、①少年院送致、②児童養護施設・児童自立支援施設送致、③保護観察、の3つがあります。
また、こうした保護処分以外に、そもそも保護処分を決めるための審判すら開かない審判不開始、審判の結果何らの保護処分にも付しない不処分というものもあります。

上記保護処分のうち、一般的に知名度が高く、なおかつ避けたいという声が多いのはやはり少年院送致ではないかと思います。
少年院送致とは、少年を少年院に収容し、そこでの生活を通して健全な育成を目指すというものです。
一般的に、非行に及ぶ傾向が強いなど要保護性が大きい少年に対して行われます。
こうした点から、少年院送致を避けるためには、少年院に行かずとも少年の更生が目指せると言えるような環境を整えることが重要です。
そうした環境整備のことを含め、少しでも不安があればぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件の経験豊富な弁護士が、少年院に行かせたくないというご要望に沿えるよう全力を尽くします。
お子さんが通貨偽造罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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